農政コラム

農政コラム|受け手が決まっていない農地134万ha

nou-admin

地域計画は「作って終わり」ではありませんでした。全国で策定が完了した一方、目標地図で受け手が決まっていない農地が約134万ha残っています。これは全体の32%です。この数字をどう読み、いつ手を挙げるか。

2026年8月16日 / カテゴリー:農政コラム / やまと-農-

数字で見る、地域計画の現在地

地域計画(地域農業経営基盤強化促進計画)は、農業経営基盤強化促進法に基づき、地域の農地を将来誰が使うのかを話合いで決め、目標地図として示す制度です。従来の「人・農地プラン」が法定化されたもので、策定期限は2025年(令和7年)3月末でした。

農林水産省の公表によると、令和7年4月末時点で全国1,615市町村・18,894地区で地域計画が策定されています。数のうえでは、ほぼ全国をカバーしたことになります。

ただし、中身を見ると話は変わります。

項目面積・割合
地域計画の区域内の農用地等422万ha
目標地図に受け手が位置付けられた面積288万ha(68%)
受け手が決まっていない面積134万ha(32%)

※ 農林水産省「地域計画の策定状況」(令和7年4月末時点)より。

3分の1近くの農地が、10年後に誰が使うのか決まっていない状態です。さらに農林水産省は、全国18,894地区の約9割が受け手の明確化に課題を抱えているとしています。

この数字の読み方

「受け手未定=すぐに借りられる農地が134万haある」という意味ではありません。条件が良い農地は既に受け手が決まっていることが多く、残っているのは条件不利地や、分散していてまとまらない農地である可能性が高いためです。

一方で、地域によっては「担い手はいるが手が回らない」「受け手が見つからないまま時間だけが過ぎている」というケースもあります。地域ごとに事情がまったく違うというのが、この数字のいちばん正確な読み方です。

「策定フェーズ」から「ブラッシュアップフェーズ」へ

2025年4月以降、地域計画は策定する段階から、運用して見直していく段階に移りました。農林水産省は「一度作って終わりではない」として、次のような年間サイクルを示しています。

9〜2月 話合い・目標地図の見直し3月 地域計画の変更4月 農林水産省が全国の取組状況を確認

実務的な資料も整備が進んでいます。地域計画を変更するための「地域計画変更マニュアル」(Ver.2.3、令和8年4月13日更新)や、「集約化に向けた目標地図の事例集」(令和7年11月)が公表されています。変更することが前提の制度になった、ということです。

ここが経営者にとって重要な点です。策定期限が過ぎたからもう関係ない、ということではありません。毎年、手を挙げるチャンスがあるという制度に変わりました。

農地は「探す」ものから「手を挙げる」ものへ

もうひとつ、2025年に大きく変わったことがあります。令和7年4月から、市町村による相対の利用権設定の仕組みは、農地バンク(農地中間管理機構)を経由する方法に一本化されました。農地法第3条による許可方式は引き続き使えますが、貸し借りの主要な入口が農地バンクに集約されたことになります。

農地バンクの実績も伸びています。令和7年度の担い手への集積面積は前年度比で0.7万ha増え、集積率は62.1%となりました。バンク創設前と比べて13.4ポイントの上昇です。バンク経由の集積は累計で約25.9万ha、新規集積の約6割を占めています。

つまり、農地を増やしたい経営者にとって、動き方はこう変わりました。

これまでこれから
地権者に直接あたって借りる地域計画の話合いに参加し、目標地図に位置づけてもらう
市町村の利用権設定で手続農地バンクを通じて貸借する
空いた農地の情報を待つ受け手として意向を先に登録・表明しておく

規模拡大を考えるなら、いつ動くか

年間サイクルが「9〜2月に話合い、3月に変更」であることを踏まえると、意向を伝えるのは夏のうちということになります。秋の話合いが始まってから名乗り出るのでは、その年の目標地図には反映されにくくなります。

  1. 市町村・農業委員会に受け手の意向を伝える「この地区で、これくらいの面積を、この作物で引き受けられる」という具体的な条件まで伝えます。面積だけでなく、作業できる時期や機械の規模も一緒に伝えると、地域側も検討しやすくなります。
  2. 地域計画の現況を確認する対象地区の目標地図で、どこが受け手未定になっているかを確認します。農林水産省は地域計画のウェブページで全国の策定状況を公開しており、受け手募集の意向がある市町村も確認できるようになっています。
  3. 農地バンクに借受希望を出しておく農地中間管理機構への借受希望の申込みは、実際に農地が出てきたときの連絡先になります。出てから探すのではなく、先に登録しておくことが有効です。
  4. 引き受ける条件を、あらかじめ決めておく「基盤整備済みなら」「まとまって10ha以上なら」「排水が確保できるなら」といった条件を先に決めておくと、打診があったときに即答できます。条件不利地を断りきれずに引き受けて、後から苦しくなるケースを防げます。

受け手未定の農地を引き受けるとき、確認すること

面積だけで判断しないでください

受け手が決まっていない農地には、決まっていない理由があります。引き受ける前に、次の点は必ず確認してください。

排水・用水の条件/区画の大きさと形状/道路からの進入経路/既存の作業道・畦畔の管理負担/周辺農家との作業調整/今後の基盤整備の予定。とくに基盤整備の予定は重要で、数年後に大区画化される見込みがあるかどうかで、引き受ける価値がまったく変わります。

なお、農地の集積・集約化には、地域計画の実現を後押しする補助事業も用意されています。令和8年度当初では「地域計画実現支援」に527億円、令和7年度補正でも936億円が計上されています。農地を引き受けることと、その農地を使えるようにする投資は、セットで考えられるようになっています。

まとめ

いま確認しておきたいこと

① 自分の地区の目標地図で、受け手未定の農地がどこにあるか確認する

② 秋の話合いが始まる前に、市町村・農業委員会へ受け手の意向を伝える

③ 農地バンクへの借受希望を登録しておく

④ 引き受ける条件(面積・排水・進入経路など)をあらかじめ決めておく

地域計画は、農地を集めたい経営者にとって公式に手を挙げられる場になりました。使わない手はありません。

※ 本記事は2026年8月時点で公表されている情報に基づいています。制度の詳細・要件は、年度、地域、公募状況等により変更される場合があります。個別の判断にあたっては、最新の実施要領・公募要領および所管行政機関の運用をご確認ください。

制度は毎年動きます。判断に迷ったらご相談ください。

やまと-農-は、農林水産省33年・行政書士12年の経験をもとに、国の制度と実際の農業経営をつないで整理します。「うちの場合はどうか」という段階からで構いません。

お問い合わせフォームへ 03-3878-3202 に電話する 受付時間 午前9:00〜午後6:00(定休日:日曜)/初回相談は5,000円(税別・1時間)です。面談・WEBミーティングのどちらでも承ります。

記事URLをコピーしました