農政コラム|令和9年度の水田政策転換に、いまから備える
2026年6月11日、水田政策の抜本的な見直しが公表されました。令和9年度から、水田活用の直接支払交付金は再編されます。「水田だから支援する」から「作物ごとに生産性を上げたら支援する」への転換です。令和8年度は、その準備に使える最後の1年になります。
2026年6月11日に示された「新たな水田政策」
農林水産省は2026年(令和8年)6月11日、「新たな水田政策(コメの中長期対策)の基本的考え方・仕組み」を公表しました。開始は令和9年度(2027年度)からです。
いちばん大きな変更は、支援の考え方そのものが変わることです。
水田活用の直接支払交付金は廃止・再編され、「その土地が水田かどうか」ではなく「その作物で生産性を上げたか」で支援を判断する仕組みに切り替わります。この転換は、2025年4月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画にも明記されていたもので、予告されていた変更が具体化した形です。
3つの柱
| 区分 | 令和9年度からの考え方 |
|---|---|
| ① 非主食用米(米粉用米・飼料用米等) | 用途を問わず、生産性向上の取組を一律に支援。実需者との複数年契約を要件に追加支援あり |
| ② 麦・大豆・飼料作物 | 収量に応じた面積払いで単収向上を支援 |
| ③ 産地交付金 | 「作付面積の拡大」中心から、生産性・収益性の向上、供給の安定化を効果評価する目標設定型へ |
注目すべきは②です。これまでの面積払いは「作付けした面積」に対して支払われていましたが、収量に応じた面積払いになります。同じ面積でも、単収が高ければ手取りが増え、低ければ減る仕組みです。
なお、単収の基準について農林水産省は、全国一律ではなく地域差に配慮するとしています。また、災害等のやむを得ない減収にも配慮するとされています。飼料用米については、国産米の必要量30〜40万トンの確保が目安として示されています。
「5年水張りルール」の取扱いも変わります
水田活用の直接支払交付金には、5年に1度は水張り(湛水)をしなければ交付対象水田から除外される、いわゆる「5年水張りルール」がありました。令和9年度からの根本的な見直しに伴い、この取扱いも変更されます。
「水張りをすべきか」「畑地化すべきか」で迷っている場合、令和8年度中に結論を出す必要があるかどうかを、まず確認してください。制度の詳細は令和8年度中に固まる予定で、いまの前提で急いで判断すると、かえって不利になる可能性があります。
秋播き麦など、すでに作付けに着手している品目の令和9年度当初の取扱いについては、継続して検討するとされています。地域の説明会に出て、最新の情報を取りにいくことが最も確実です。
令和8年度は「決める年」──いまから備える4つのこと
令和8年度は、地方説明会と制度設計の詳細検討が行われる年です。制度が固まってから動くのではなく、この1年で経営側の準備を進めておくことをおすすめします。
- 交付金への依存度を、数字で把握するまず、直近3年の経営収支のうち、水田活用の直接支払交付金と産地交付金が占める割合を計算してください。「作物ごとの生産性で決まる」制度に変わったとき、自分の経営のどこが増減するのかは、この数字がないと試算できません。
- 圃場ごとの単収を測る仕組みをつくる収量に応じた面積払いになる以上、圃場ごとの単収を把握していることが前提になります。これまで全体の出荷量しか記録していなかった場合、令和8年産から圃場別に記録する体制を整えてください。収量コンバインや営農管理システムを使えば負担は減らせますが、まずは記録の習慣が先です。
- 実需者との複数年契約を検討する非主食用米では、実需者との複数年契約が追加支援の要件として示されています。単年の相対取引を続けている場合、複数年契約に切り替えられる相手がいるかどうかを、いまのうちに打診しておく価値があります。
- 産地交付金の使い道を、地域で議論する産地交付金は「効果を評価する目標設定型」に変わります。地域協議会でどの取組に配分するかが、これまで以上に経営に直結します。配分が決まってから意見を言うのではなく、議論の段階から参加してください。
米政策そのものも動いている
水田政策と並行して、米の流通制度も変わりました。2026年7月15日、主要食糧法(食糧法)の改正法が公布されています(施行は公布後1年以内の政令指定日)。
- 流通実態把握の強化:届出対象を加工・中食・外食事業者に拡大し、定期報告制度を新設。在庫量・取引量・取引価格等を、規模に応じ月1回〜年1回報告
- 備蓄の見直し:備蓄の目的を「生産量減少への対応」から「需要増加等による供給不足への対応」にも拡張し、民間備蓄制度を創設
- 生産調整規定の削除:形骸化していた生産調整関連規定を廃止し、「需要に応じた生産の促進」を法律に位置づけ
これらを合わせて読むと、国の方向性は一貫しています。面積を割り当てて調整する時代は完全に終わり、需要と生産性で決まる時代に移行するということです。令和9年度の水田政策転換は、その総仕上げにあたります。
まとめ
① 直近3年の交付金依存度(収入に占める割合)を計算する
② 令和8年産から、圃場ごとの単収を記録する体制をつくる
③ 非主食用米の実需者に、複数年契約の可能性を打診しておく
④ 地域の説明会に出て、産地交付金の配分議論に参加する
⑤ 「5年水張りルール」の判断は、制度の詳細が固まるまで急がない
制度が変わるとき、いちばん不利になるのは変わってから慌てて動く経営です。逆に、いま自分の数字を持っている経営は、新しい制度が示された瞬間に判断できます。この1年の使い方が、令和9年度以降の差になります。
※ 本記事は2026年8月時点で公表されている情報に基づいています。制度の詳細・要件は、年度、地域、公募状況等により変更される場合があります。個別の判断にあたっては、最新の実施要領・公募要領および所管行政機関の運用をご確認ください。
やまと-農-は、農林水産省33年・行政書士12年の経験をもとに、国の制度と実際の農業経営をつないで整理します。「うちの場合はどうか」という段階からで構いません。
お問い合わせフォームへ 03-3878-3202 に電話する 受付時間 午前9:00〜午後6:00(定休日:日曜)/初回相談は5,000円(税別・1時間)です。面談・WEBミーティングのどちらでも承ります。